妻沼澄夫の写真
妻沼はホワイトアスパラを口に運び「そう、まず素材だね。この料理のように素材が素晴らしければ加工は最低限でいいんだよ。在来工法でも加工度の低い材料ほど優れているということを業界ではアピールしないよね」
「昭和40年頃から大量消費、大量生産がはびこってきて、常に新しいものを好む日本人の志向が狂わされたんだ。『既成のものならこんなに安くこぎれいなものができますよ』というイメージを植え付けた。実際には安くもないし、先進的でもないのはどうしてだろうねえ」と福見。

「ライフスタイルにあわせて自由にいじれる家」
宮島はみんなにワインをそそぎながら『そうそう』と頷く。
「大量生産のしわ寄せは技術を持った大工さんにいっちゃったよね。建主が『もっと木を使いたい』というと『高いですよ』となる。みんな家は一生に一度だと思っているからできるだけ大きく、と考えるんだけどそうなるといい素材は使えない」宮島は続ける。「そんなわけで言いなりの個性のない中途半端に大きな家が建っちゃうんだよね」

「今の家は不必要に大きすぎないですか?」
3人の話は熱を帯びてきた。これまで何度か一緒に仕事をしてきた3人には現在のちまたの家造りには、何かしらの不満があるらしい。

話している間にも料理は次々と運ばれてい来る。ソラマメとサヨリの香草ソース、仙台牛のゴボウソース。嬉しそうに妻沼が新しいワインを注文する。
「そこでさ、以前話したと思うんだけどウチがKハウスというのを考えた。どうだろう」「あれはいいですね」宮島がワイングラスを傾け言う。「自分の家の構造がハッキリと分かるのがいい。建ててしまったら終わりという考えではなくて、その後も変わっていくライフスタイルにあわせて自由にいじれるという考えがいいですね」。

福見がその後を引き継ぐ。「サイズがいいんじゃないかな。今の家は不必要に大きすぎないですか。3人家族でリビングが20何畳というのはムダですね。家族が集まるのは茶の間でいいかも」


「改築や増築がしやすいように素材は見えるようにね」
「家族のぬくもりや存在感が感じられる家が本当の家じゃないか、と思うんだ」妻沼の言葉に2人が頷く。「坪単価じゃなく家全体での価値を考えて欲しいね。本物の素材を使い、建て主の個性やこだわりを十二分に盛り込んで、コンパクトにまとめる。もちろん改築や増築がしやすいように構造材は見えるように作る」


宮島が宙に視線を浮かばせている。「いいなあ、そういうの。作る方としても苦労が多いかもしれないけどやりがいがありますよね」
福見も「そういう家が低予算で建てられるということを広く知らしめたいですね。家は一生に一度だけじゃなく、2度、3度作ってもいいということ。Kハウスならそれが無理なくできるし、車を何度も買い換えるよりライフスタイルもより充実したものになるんじゃないかな」。

「個性やこだわりを十二分に盛り込んで、コンパクトにまとめるのがK-HOUSE」
「盛り上がってるね」店主がにこやかに自分の座るイスを持ってきた。
「いやあ、どの料理も素晴らしいですね。マスターごちそうさま。でも、妻沼さんいいんですかこんなにごちそうになって」
「安いモンだよ。君たち二人がKハウスに協力してくれるんだから」いたずらっぽく妻沼が笑う。
「そうくるとおもいましたよ」

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料理写真 シホッキ貝とホワイトアスパラのフリット、ジェノベーゼのソース
「サクッとしたホッキも甘く、思わず目を閉じる。さらにコリッとしたアスパラの歯ごたえが絶妙」

料理写真 空豆とサヨリの香草ソース
「ソースとサヨリが引き立てあう一品」

料理写真 仙台牛のゴボウソース
「口の中でとろけるような牛肉に、ゴボウの風味がからみあう」