新築の最高クラス並みに断熱性能アップ
Tさま邸のリノベーションポイント

Tさま邸は地元の腕利きの大工が建てた立派な邸宅です。室内の壁には杉板、柱には絞り丸太を使うなど、重厚な造りが随所に見られます。「価値ある建物を後世に残したい」というTさまの想いをくみ取り、内装は極力残しながら、断熱・気密性能を高める改修を実施。断熱性能は新築の最高レベル近くまで上げています。

Tさま邸は、地元の腕利きの大工が建てた、立派な家です。室内は、旅館のような豪勢な造り。なかなかこのような家にはお目にかかれません。
リノベーションの設計は、(株)ホリゾンアーキテクツ一級建築士事務所の一原寿寛さん。隣りの息子さんの家と同じ設計者です。息子さんのお宅とデザイン・テイストを合わせたガルバリウム鋼板張り。その上で配色は既存建物の外観を踏襲することで、「新しさと懐かしさ」を表現しました。
また、建物左端に半島のように突き出た洋室は、冷暖房負荷の低減を考え、減築しています。

上の写真はリノベ後ですが、洗い出しの玄関土間をはじめ、リノベ前の姿を極力残しています。
室内の壁に杉板を使ったり、柱には無垢のラワンが使われている箇所も。東南アジアで採れるラワン材は、今では伐採が規制されていて、とても貴重なものになりました。

廊下にある柱はエンジュでしょうか。床柱に使うような立派な柱です。

暖房はペチカがあり、玄関ホールとの間仕切りに耐火壁としてレンガを使っていました。
隣りには、当社が2020年に新築した息子さんの家があります。同じ敷地内だったので、息子さん宅の新築の打ち合わせを何度かTさま邸で行うことも。その際、立派な造りに私たちは感心していました。
実は、Tさま邸は冬、かなり寒かったそうです。広さも普通の家の3軒分近くあり、灯油代も多くかかっていました。過去に数回のリフォームで断熱改修していたものの、気密施工をしていなかったため断熱材が利いておらず、すきま風から底冷えしやすい環境でした。
設計者の一原さんに「断熱リフォームしたい」と相談したところ、一原さんは断熱リフォームにはノウハウがあり、実績のある建築会社を選ばないとうまくいかないことを伝え、当社を推薦してくださいました。

一原さんは、「価値ある建物を後世に残していきたいというお施主様の想いをくみ取り、内装は極力残しながら快適に暮らせる住まいを意識しました。室内からの断熱改修をできる限り避け、外部からの断熱改修・耐震改修を道立北総研の断熱改修マニュアルに従うなど、確実な断熱性能・気密性能の確保を目指しました」と話しています。
続いて、具体的な改修箇所を見ていきます。

洋室を撤去した後、建物外周に沿ってスロープを作りました。将来、車いす生活になったときでも玄関からの出入りが安心してできるようにしています。
断熱タイプの玄関ドアは、そのまま流用しました。

ストーブは撤去しましたが、インテリア性の高いレンガ壁は残しています。

また、断熱上の弱点になりやすい出窓は撤去して通常の壁付け窓にし、サイズ調整した上でトリプルガラスを採用しました。

リノベ前のキッチンは、壁付けのL字型で大家族向けでした。

リノベでキッチンはコンパクトにして、すぐそばにダイニングを設けました。また、車いす対応も考え、出入口はドアを引き戸に変更しています。

1階玄関の左横にある廊下は縁側として使っています。リノベ前は写真左のように和の趣がありすてきでしたが、段差がありました。リノベ後は写真右のようにバリアフリーで、すっきりとさせました。
さらに、貴重な木を使った建材は、なるべくそのまま使っています。窓際の柱の一部はラワン無垢材です。また、貴重な屋久杉の板壁もそのまま生かしています。


2階洋室はブルーのクロスを配し、モダンなデザインに一新。明るくかっこいい雰囲気です。


娘さんが使用しているもう一つの洋室は、イタリアンカラーの大人かわいい部屋になりました。
工事後は、ねらい通り住宅性能が大幅にアップ。断熱性は新築住宅の最高レベルに近く、耐震性も新築住宅並みに向上しています。改修費用は、同レベルの性能を持つ新築住宅の工事費用に比べて約3分の2以下におさまりました。今回の工事では、札幌市の性能向上リフォームの補助金を受けています。
また、完成後に気密測定を行ったところ、C値は0.7と、札幌版次世代住宅基準「改修住宅」におけるハイレベルに必要な2.0を大きく上回る気密性を確認しています。新築住宅でも、C値1.0を上回れば高気密住宅と言われる中、新築以上の性能を持った高性能住宅に生まれ変わりました。





