トップランナー認定住宅の夏の涼しさを大学が検証中です

厳しい暑さも和らぎ、ようやく過ごしやすい季節になってきました。例年になく長かった夏が過ぎ、ホッとひと息ですね。今年の夏は、家の中をいかに涼しくするか、そして冷房の電気代をいかに抑えるかについて、いろいろと考えながら過ごされた方も多かったのではないでしょうか。

住宅の断熱性が高いと、熱が逃げにくく室内が暑くなる――。「断熱」という言葉のイメージから、高断熱住宅はこのように誤解されがちです。当社では、札幌市が定めた「札幌版次世代住宅基準」の最高ランク・トップランナー(現行基準ではプラチナ)基準をクリアした高断熱住宅を施工してきた経験から、断熱・気密性の向上に加え、室内に入る日射量にも配慮すれば、高断熱住宅は夏も涼しく過ごすことができると感じています。

では、日射が多いと、室内の温度やエネルギー消費量はどれだけ影響するのでしょうか。当社はその実績値を調べるため、北海道科学大学の平川秀樹准教授にご依頼して、オーナー様宅でのデータの計測を行っています。

こちらが計測を行っているTさま邸。Ua値(断熱性)0.17Wの最高クラスの高断熱住宅です。1階、2階に4カ所ずつ、計8カ所に精密な温度計を設置して室温データを取得しながら、冷房に使う電気や暖房に使うガスの使用量も記録しています。

こちらは、1階リビングの南面です。Tさま邸では、全ての窓に断熱性の高いトリプルサッシを採用しています。ここ最近流通している窓ガラスは、太陽の熱線を反射する効果がありますが、南面と西面には、冬場の日射熱を室内に取り込むため、あえて「日射取得型」サッシを使用。さらに、1m近い庇を設けて夏の日差しは遮り、冬の低い日差しを家の中に取り込むよう設計されています。

北海道科学大学准教授・平川秀樹先生の講演スライドから

こちらは、窓ガラスを日射取得型にした場合と日射遮蔽型にした場合でどちらが暖冷房エネルギーを減らせるかシミュレーションしたものです。日射取得型は日射遮蔽型に比べて、冬場の暖房消費量は約3200MJ少なく、一方、夏場の冷房消費量は約300MJ多くなっています。夏の冷房消費量は増えるものの、暖房費の削減効果はその10倍と大きく、年間トータルでエネルギー消費量の削減につながりそうです。このシミュレーション結果を踏まえて、Tさま邸の窓には南面と西面に取得型、それ以外に遮蔽型のサッシを採用しました。 (※MJとは熱量の単位ですが、やや難しいのでここでの説明を省略します)

北海道科学大学准教授・平川秀樹先生の講演スライドから

現在、2022年8月と2023年1~2月に取得したデータによる中間結果が出ています。

興味深いのが、冷房に使った8月の電気使用量を日照時間が長い日と短い日で時間別に比較したものです。日射が1日8時間以上(晴れ)の場合と、1日4時間以下(曇りか雨)の場合を比べたところ、1日の電力消費量の差は、1kWh程度。この差は、エアコンの消費電力分と推定され、その金額は1kWh=わずか30数円です。また、室温は概ね26.5度以下と快適な温度帯をキープ。断熱性の良さは、エアコンの効きがよくなり、省エネにつながっていることが分かります。

北海道科学大学准教授・平川秀樹先生の講演スライドから

また、冬期(2023年1月22日~2月18日)の1ヵ月間、日射が1日6時間以上の場合と3時間以下の場合の温度変化を比較したところ、日射があると2階子供室では、室温の上昇が見られます。細かい部分についてはもう少し詳しく見る必要があると思いますが、日射があってもなくてもガス使用量は少なくなることが分かりました。

以上の結果から、夏期は日射取得型サッシでも、庇などによる日射遮蔽対策をすることで、室温の過剰な上昇はなく、エアコンの電気代が極端に増えないことが分かりました。一方、冬期は窓から室内への日射を効果的に取り込むことで室温の上昇を促し、暖房エネルギーの削減につながっています。

Tさま邸では、今年の夏も調査を継続中です。猛暑だった夏は、果たしてどのような結果になったのか…。気になる検証結果については、データがまとまりましたら改めてご報告したいと思います。